
左右の度数に大きな差のある場合、「不同視」の影響を考えながら度数を決定する必要があります。コンタクトレンズとメガネの度数矯正の影響が如実に現れる眼鏡の不同視への対応についてまとめました。
<不同視眼の眼鏡補正はなぜ難しいのか?>
1)不等像視の問題
○屈折性不同視を眼鏡矯正すると不等像視が発生します。
・左右の眼鏡矯正球面度数の差は2.00D以内に抑えるのが良いとされます。
・ただし、個人差が大きく、5.00Dくらいまでの度数差でも両眼視が可能であるとの報告もあります。《特に小児で》
・実際に不同視眼を眼鏡補正し、アニサイコニアテストにより不等像視を測定すると、必ずしも不同視量と不等像視量には明確な相関関係は認められません。これは、不同視眼が軸性の要素を含んでいることが考えられます。軸性不同視では、眼鏡補正による不等像視の発生はありません。
○乱視眼の不同視を眼鏡補正すると不等像視が発生します。
・不等像視には、大きさの違いのみでなく形の違いもあります。
・左右1.50D以上の補正乱視度数差に注意が必要。
・左右の軸が異なるとき、あるいは斜乱視の補正で特に注意が必要。
2)周辺(側方)視でのプリズム作用の左右差の問題
○左右の度数差が大きいほど、プリズム作用の左右差は大きくなります。
○視線が光学中心からずれるほど、プリズム作用の左右差は大きくなります。
・プレンティスの公式により、発生プリズム量は計算できます。
○特に上下方向でのプリズムは眼精疲労を伴いやすいとされます。
・通常の遠近両用レンズでは、上下プリズムの発生を避けられません。
<どのように対応すれば良いか?>
1)視力測定の中で
○両眼視が可能な不同視眼か、中心窩抑制を伴う両眼視のない不同視眼かを見極める。
・ポラテストの十字テストやワース4灯テスト、SGテストが有効。
屈折異常があれば両眼ともに補正した上で、偏光フィルターを使用する十字テストを行う。
一方の線しか見えないときは抑制がある。
不同視眼の眼鏡対応は、
「不等像視」と「周辺視のプリズム作用の左右差」という
両眼視に関わる2つの要因を考慮しながらの対応が求められます。
左眼
右眼
両眼
・中心窩抑制がある場合は、左右の度数差があっても眼鏡装用が可能なことが多いとされます。
逆に、片眼を弱補正すると見づらいとの声もあります。
・両眼視がある場合は、度数差が大きくなると、眼精疲労が起こり、装用が困難となりやすいです。弱度数眼を通常通り矯正し、他眼を装用可能範囲の弱補正で合わすとよいでしょう。弱補正側の視力を(0.6)以上に補正すると両眼視も期待できます。
○不同視眼では上下斜位を伴うことが多いとされます。
・眼位測定を行い、上下斜位を見落とさないようにします。
○装用テストを十分行う。
・頂点間距離を適正にして行う。
・特に周辺視を行ったときの違和感に気をつける。
・遠近両用レンズでは特に留意する。
また、遠見と近見で利き目が交替する時は、モノビジョンが適応する場合があります。(例えば、右眼で遠方を左眼で近方を見るような合わせ方)
2)販売、加工調整の中で
○必要以上に大きなメガネを販売しない。
○アイポイントをメガネの用途に合わせて正確に測定する。
・上下斜位が存在するときは、アイポイントの高さ設定で、眼位の補正効果に配慮する。
○遠近両用レンズご希望のお客様では、トライアルによる確認が特に必要です。
・二重焦点レンズの特別対応として、スラブ・オフ加工がある。
・累進多焦点レンズでは、累進帯が短いタイプが上下プリズムの発生が少ない。
○単焦点メガネでは、頂点間距離を短めにフィッティングすると良いとされます。
コンテンツ提供:WOC