
クロスシリンダーと十字視標(クロスグリッド)を用いた近用加入度数の測定で、「タテ線とヨコ線の色が違って見えるのはなぜか」との質問があります。今回は、「色が違って見えるナゾ」に迫ってみたいと思います。
<加入度数の測定法は?>
クロスシリンダーで人工的な直乱視を作り、加入度数の測定を行います。
「線の色が違って見える」のは、タテ線とヨコ線の濃さが同等に見える適度な加入度数がセットされたときであり、最小錯乱円が網膜上に位置し、前焦線と後焦線が網膜を挟んで前後に位置したときです。(図-1)

白い部分からの反射光が眼に入ると、色収差によりタテ線が赤っぽく、ヨコ線が青っぽく見えます。(図-1)

白い部分から反射しタテ方向に入射する可視光線は、全体的には網膜の前方に結像しますが、色収差により波長の短い紫青の光はより網膜の前方に結像し、網膜上ではタテブレが起こります。
タテブレした紫青の光がヨコ方向の黒線にかぶりヨコ線が青っぽく見えます。一方、波長の長い赤の光は、網膜近くに結像するためほとんどブレは起こりません。(図-2)

白い部分から反射しヨコ方向に入射する可視光線は、全体的には網膜の後方に結像しますが、色収差により波長の長い赤の光はより網膜の後方に結像し、網膜上ではヨコブレが起こります。ヨコブレした赤の光がタテ方向の黒線にかぶりタテ線が赤っぽく見えます。
一方、波長の短い紫青の光は、網膜近くに結像するためほとんどブレは起こりません。(図-3)
<お客様対応は?>
○色が違って見えるのがむしろ正常であることをお伝えし、より濃く見える線、あるいはシャープに見える線をお尋ねしましょう。
色が違って見える状態は、ほぼ適切な加入度数がセットされたことを意味します。
○「タテ線が赤っぽく、ヨコ線が青っぽく見えますか?」と確認するとお客様も安心されます。
コンテンツ提供:WOC