
遠近両用眼鏡の近方視で生じる上下プリズムの影響を確かめる方法を紹介します。
不同視眼鏡の周辺部ではプリズム作用の左右差が生じます。特に近方視で上下プリズムが発生する遠近両用眼鏡の販売で注意が必要です。
<上下プリズムの発生例(累進レンズ)>

基準点下方15mmで近方視した時のプリズム効果
(遠近の近用度数はAddで異なるが、簡易的に左右度数差で計算)
R)2.00×1.5=3.00△BD
L)4.00×1.5=6.00△BD →両眼では、L)3.00△BD
プリズム計算の基点は、累進屈折力レンズの幾何学中心となっている。
<実践的な確認法>
1.テスト枠に累進装用テストレンズをセットし、近方の視標を見て頂く。
2.両眼開放時と片眼遮蔽時(視力の良い方の眼で見る、視力が同等の場合は利き眼で見る)の見え方を比較します。
①「両眼開放時が見やすい」
→ 「両眼視に問題なし」と考える。
②「変わらない」
→ 「とりあえずは使えそうである」と考える。
(抑制、眼位ズレの有無を確認するとよい)
③「片眼の方が見やすい」「両眼で見るとだぶる」
→ 「両眼視に問題あり」と考える。
3.両眼視、眼位ずれの確認を行う。
方法①
近方の一点を固視した状態で交互にカバーテストを行なったとき、視標の位置に明らかな高さの違いがあれば上下プリズムが生じていると考える。(多くの場合、外斜位も見られる)
・ 高さのずれを中和するプリズムを付加し、プリズム量を測定することができる。
・ プリズム補正後(半分くらいの補正でも可)の両眼開放時の見え方が良くなる場合は、上下プリズムの影響が問題となる。
方法②
レッドスクリーンテストの活用

・ 中央に直径3mmくらいの小さな白点を配置したB5~A4サイズの黒い紙面を用意する。
(図1)

・ 片眼(右眼)にレッドフィルターを装用し両眼で見たとき、(図2)のように見えれば上下プリズムと外斜位が生じている。
赤点と白点がずれたままで融像できない場合は両眼視に影響が生じることが多い。
<結果とお客様対応>
①両眼開放時が見やすい場合
→上下プリズムの影響がない(少ない)と考え、通常の対応をする。
(装用テストで問題ないことを慎重に確認する)
②変わらない場合
→抑制があるときは装用可能なケースが多い。
→融像ができているときは、装用可能だが長時間の近方視には向かない。
・ 累進帯の短いタイプをお勧めする。
・ 長時間の近業に近用専用単焦点眼鏡の併用をお勧めする。
③片眼の方が見やすい、両眼で見るとだぶる場合
→累進眼鏡は不適応。遠用、近用の使い分けを勧める。
不同視のお客様対応は、眼位、融像幅、抑制の有無など両眼視機能の要因が関わります。今回は、短時間で累進眼鏡の適否を見分ける方法を紹介させていただきましたのでお試し下さい。
コンテンツ提供:WOC