
近視の過補正メガネの装用で乱視が潜伏したお客様事例を紹介します。
近視の過矯正は調節力が豊富な10~20歳代で注意が必要ですが、50歳あるいは60歳以上の年代でも時々見かけられます。
<お客様事例>
(お客様情報)
◆53歳 男性
◆ ご来店動機
「他店で購入したメガネが合いづらく、特に右眼の視力が不安定なので詳しく測定して欲しい。」
◆ご使用遠用メガネ
R)(0.6×S-6.25D C-1.00D A10゜)
ROCD34mm
L)(0.7×S-6.50D C-0.50D A165゜)
LOCD34mm
◆ご使用累進メガネ(HOYA外面累進) 2ケ月前に作製
R)(0.7×S-5.50D C-1.50D A20゜
Add+2.50D) ROCD34mm
L)(0.9×S-5.50D C-0.75D A135゜
Add+2.50D) LOCD34mm
(当日測定データ)
◆オートレフ値
R)S-4.50D C-1.00D A40゜
L)S-5.75D C-1.00D A127゜
◆完全補正度数
R)(1.0 ×S-2.25D C-4.00D A50゜)
RPD34.0mm
L)(1.5p×S-4.75D C-1.50D A125゜)
LPD33.5mm
◆作製遠用メガネ
R)(1.0p×S-3.00D C-2.75D A50゜)
ROCD34.0mm
L)(1.5p×S-4.75D C-1.25D A125゜)
LOCD33.5mm
◆作製予定累進メガネ
R)(1.0p×S-3.00D C-2.75D A50゜
Add+2.25D) ROCD34.0mm
L)(1.5p×S-4.75D C-1.25D A125゜
Add+2.25D) LOCD33.5mm
ND=38cm
<着目点>
◆右眼については、オートレフ値の近視度が現眼鏡より明らかに弱度数となっている。
◆累進部で遠方視している。
→(仮説)
・右眼は近視の過補正ではないか?乱視度の未補正、弱補正を球面度数で補い視力向上を試みたのでは?
・調節を除去すれば、右眼はもっと強度の乱視度が測定され、視力もアップするのでは?
・右眼の乱視軸は倒乱視化で90゜方向に変化しているのでは?
・右眼ほどではないが、左眼も調節を除去した正確な屈折補正を行えば、視力がアップするのでは?
<右眼の測定をどのように進めたか>
(1)雲霧状態となるS-3.50Dをセットし、乱視表を見ていただいた。

→2-8時の方向が濃く見える
→乱視軸A60゜と予測した
(2)乱視表が均一に見えるようになるまでA60゜で乱視度数を入れた。

→S-3.50D C-2.50D A60゜
でほぼ均一になった。
(3)球面値をS-2.50Dに変えて、再度乱視表を見ていただいた。

→1時の方向が濃く見える
→軸を30゜方向に少し調整が必要、乱視度はまだ弱補正と予測した
(4)乱視軸を50゜に調整し、均一に見えるまで乱視度をアップした。

→S-2.50D C-3.50D A50゜でほぼ均一になった。
(5)二色テストと最高視力の最もプラスより球面値で球面度数を調整した。
→S-2.75D C-3.50D A50゜となった。
(6)クロスシリンダーで乱視軸と乱視度数の正確な測定を行った。
→S-2.50D C-4.00D A50゜となった。
(7)視力測定で(1.0)の視力が出ていることを確認し、さらに+0.25Dを付加して調節の除去を行った。
→最終的に右眼は、(1.0×S-2.25D C-4.00D A50゜)と測定された。
コンテンツ提供:WOC