
「この視標は見えますか」とお客様に尋ねました。お客様はどのように答えるでしょうか。
眼鏡店で普段の視力測定において視力を決定していますが、正確に測られているでしょうか。
ここで、もう一度基本にかえり視力について考えてみたいと思います。
眼鏡店員が日常の業務で測定している視力は、お客様の目の、最小分離閾の能力をお測りしています。
それがランドルト環でいう切れ目の方向が分かるということです。
その能力の限界を測定しているわけですから、
眼鏡店員がお客様にかけることばの違いにより結果が変わってくる場合があります。
例えば裸眼視力の測定のときに、お客様は0.3の視標が図のように見えていたとします。

このときに
「この視標は見えますか」とお客様に尋ねました。
お客様はどのように答えるでしょうか。
中には「ぼやけて見えません」と答える方がいらっしゃいます。
それで判断すると、このお客様は0.3が見えていないということになります。
そこで
「ぼやけていても構いませんが、切れている方向が分かれば教えてください。」
とことばを掛けると、
「それなら右です」と答えが返ってくるはずです。
この場合の視力はいくらでしょうか。
当然0.3以上の視力があるということになります。

視力の測定は見える限界を測っているわけですから、
常に最高視力が求められます。
明瞭に見える視標があれば、
その下にぼやけて見える視標があります。
もう、どうやっても見えないというところを確認して
その一つ前がそのお客様の視力値ということになります。
これは、補正視力値においても同じで、
1.2まで見えるとよく見えているので、そこで測定を止める人がありますが、
1.5または2.0まで見えないかどうかの確認は常に行う必要があります。
また、近見の視力を測るときに
「あまり無理をせずに目を楽にして読んでください」
と尋ねる人がいますが、本当にそれで良いのでしょうか。
オートレフの測定や遠見の度数測定では調節の介入を防ぐために
楽に見てもらっていますが、近くの視力に関しては調節を使わないと
良く見えないので、しっかりと見てもらって測ることが必要になってきます。
ただし、目を細めて見てはいけません。
お客様の視力の記録は常に最高値が記録できるように心がけてください。

コンテンツ提供:WOC